してせっかち退院ではなかったのだからどうぞ呉々御安心下さい。
 かえって茶の間でお茶をのんでいたら、林町からお祝にお魚を一折送ってよこしました。あっちは、今、咲枝も太郎もかぜ引で食堂にひきこもっていて来られない由。我が家にかえって、いつか下手な図でお知らせした私のおきまりの場処にどっこいしょと腰をおろすと、面白いものね。気分がすっかり変って、病院にいた間の、ひとまかせな気がなくなって、シャンとして来ます。
 夜はもらった鯛をチリにして御馳走したが、私はつかれていて本当の食味はなかった。家がさむくて「アイスクリーム・ホーム」と云う名がつきました。病院は六十八度から七〇度であったから、うちへかえってすぐ二階の火のないところに臥たら〇度で、頭がしまっていたいようでした。それから火を入れ、甘いがつめたいアイスクリームを段々あっためて、きょうはもう我が家の温度に馴れて、平気。暖い二階で十度です。華氏五〇度。きのうのお手紙に流石《さすが》相当の気候とありましたが、全くね。本年はそれによけい寒いのです。水道が今年ほど毎日凍ることは去年なかったことです。そちらはさぞさぞと思います。
 十日の夜は久しぶ
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