筆です。先が細くて、いちいちインクをつかったりペンをかえたり出来にくい場合の役に立って居ります。ウォータアマンです。
こういうまとまりのない文章の伴奏として、キーとあいてひとりでに閉る扉の音。パタパタいう草履のおと、何か金物のぶつかる音、廊下に反響して言葉は分らず笑声だけ高い二三人の女の喋り。どこかの咳等があります。病院は今ごろから九時ごろまでいつもなかなかざわつきます。全体がざわめきの反響に包まれている。あしたもうかえると思ってこちらもきっと落付かないからでしょう。やかましさが実に耳につくこと。
十二日
さて、久しぶりで例のテーブルの前。九日づけのお手紙、昨晩茶の間の夕飯が初まろうというときに着きました。どうもありがとう。それについてのことより先に十日の退院の日からのことを書きます。
十日はいい塩梅に風も大してなかったので大助り。午後二時ごろまでに世話になった先生がたに挨拶して自動車にのって榊原さん、寿江子とで家へかえりました。いろんな挨拶や何かでつかれはしたがおなかの方は大丈夫でした。熱も出ず。大体私ぐらいきれいに癒った傷ですっかり完成までいれば、もう全く理想的である由。決
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