しました。十五日ごろ出かけたいと言伝《ことづて》させようとしたら十五日は無理よ、無理よ、二十日にしておけと大いに力説したから我が意を得たわけです。それに二十八日のことも通じていたし満足そうにしていました。いろいろ不十分ではあったが、寿江子としてはよく手つだってくれました。彼女としては初めてのことでした。体の方がやはりましになっているので、出来るのだと云っている、それもそうでしょう。先頃は省線で立っていることなどつかれて出来なかったそうですから。
六日のお手紙は様々の心持、様々の想像される情景がのっていて、くりかえし、くりかえしよみました。隆ちゃんの手紙、全く、一遍よんだだけでは置けない手紙です。私の方へも病気の見舞と挨拶とをかね、同じような勇壮さ同じようなやさしさ、何とも云えぬ素朴さで満ちたいい手紙をくれました。その手紙をよんだとき、あなたの方へもこういう手紙あげたかしら。空が自分の美しい輝きを知らずに輝いているような美しさと、その美しさが環境の表現しかとっていないところ、しかもそれを透して本来の光が見えることなど感動をもって考えていました。なかなか心を動かされました。稲ちゃんが来た
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