ので、この手紙一寸見て、とよませた。そんな心持でした。だからお手紙見て、実に同感であったし、こういう気持で愛情を抱いている兄や何かとの生活のつながりということについても浅からぬ思いを抱きました。乗馬隊ですってね。あなたは馬におのりになったそうですが隆ちゃんたちのれるのでしょうか。馬もきっと、あのひとになら優しい動物の心でなつくでしょうね。
富ちゃん、島田で手つだうこと初耳でした。克子さん、二十五日ごろ御結婚です。よろこんで新生活を待っている手紙が来ました。私たちのお祝は針箱です。いいのが買えましたって。針箱というものは情のこもったもので、妻にも母にも暖いものです、鏡台よりも。そうでしょう? 女が鏡台の前であれこれしているの、面白いが、時に薄情で女の無智から来る主我性や動物性があらわれる。針箱は活動的で一家の清潔の源《みなもと》に近くていいわ。私が大きいギラギラした鏡の好きでないのは、そういうようなあれこれのわけで、あながち、まんまるなのがいつも目に映れば悲しかろうという自分への思いやりではないの。まんまるなのを決して気がひけてはいないのですものね。まして、盲腸征伐の後では!
京大に
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