をはがす。そのとき皆が、一寸どうかしらという表情を沈黙のうちに示す。すっかり乾いて居ました。「もうすっかりきれいじゃないか、もういい」そして、私が歩くとき胃の下の方がつれて、すこし胸がわるいようになりますけれどと云ったら、「横づなでしめたらいいでしょうな」すると、外科の婦長をしている大層しっかりものの森田さんという看護婦が「木綿を二つに折ってしっかり巻いておおきになると一ヵ月ぐらいでお馴れなさいますよ、寒いと傷がピリピリ痛いときがありますから真綿でもお当てになってね」とのことでした。では明日かえったらそのようにしましょう。木村先生は制作品にお名残の一|瞥《べつ》を与えて出てゆかれました。
 それからお風呂。あったまって、かえって来て、横になってボーッとしていたら案外早く寿江子がかえって来ました。ひどいひどい風の由。では又きょうも外出初は中止です。一生懸命に喋ってパタリと落ちて、両方で大笑いをなすったって? 本のこと、その他わかりました。ありがとう。それに、私の外出について寿江子は大変監督権を与えられたように得意になって、主観的にいいつもりでも云々だとか、第三者が見て云々だとか、口真似を
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