にくっきりして来て居ります。どんなに或る一組は他の一組ではないかということが痛感されます。この中では私たちの生活というもの、その独自性もやはり深く考えられ、自分たちの小道についても深く思う。よその根にどんなに近くよって見たところで、自分の花は咲かない。自分の根の養いとするのでなければ。このあたりのこともなかなか面白いものです、人間生活というものの。
[#図8、花の絵]
きのうは、昼すぎ家を出て、ター坊のお母さんをつれて、てっちゃんのところへ行きました、およばれ。てっちゃんが世帯をもって初めてです。赤ちゃん大きくなっている。卯女ちゃん[自注11]の両親だの、良ちゃんのお母さんが弟息子をつれて来て、皆それぞれ親子のつどいでした。てっちゃんの家のあたりは去年ぐらいまでは前が畑でよかったらしいが、今は住宅地に売ろうとしているところで、急速にぐるりが変って来かかっています。豪徳寺というお寺を散歩しました。ここに井伊直弼の墓があります。又招き猫という、縁起の猫の本尊(由来不明)があって、花柳界などこの頃大層な儲りかたにつれ、お猫様繁昌で紫のまくがはってあったりするのを見
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