前提されるわけです。そして又有機的な微妙さで、おのずから形態もそれに準ずる。
 ジャーナリスムとの接触のこと。消す、消されるのこと。あの手紙の中で云っていたことは、生活の経済上の必要の点から云って居りました。限度を知ることは元より。真の労作を築いてゆくことにしか、全面に自分を成長させるものはない。その限度を明瞭にした上で、かける一杯のところで、人間らしいものをかき、経済の必要もなるたけみたして行かなければならない、という意味のつもりでした。所謂外見的な面子《メンツ》を保つために、低い限度を自分の最大限として稼ぐ気は家のことその他毛頭ありません。でも最低五六十円はなくてはならない。あれは、その話。そして又真の労作というものもその現実性から見れば、それは単に発表し得ないということにだけかかってもいないわけですから。前のこととは別にこれとして考えることもあるわけです。
 この頃は、友達たちの生活をいろいろ眺めても、実に箇別性がくっきりとして来て居ます。まあ大抵夫婦一組ずつと見て、その一組がそれぞれの過去現在のあらゆる持ちものをもって、それぞれの足の下の小道をつけつつ生活している、その姿が、実
前へ 次へ
全766ページ中212ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング