がとう。こういう風にして追々いろいろと長くつづく仕事もしてゆけると楽しみです。土台私は、決して夜ばかり好きとか、夜の方がよくかけるとかいうのではないのよ、その点では昔から、静かで明るい昼間を実に愛して、仕事して来ているのですから。どうぞ御安心下さい。
 あれから大阪ビルへ行ったら、その廊下で先達って一寸お話していた大井という弁護士の事務所を見かけました。
 大阪ビルから電車で三省堂へゆき、そこで和英コンサイズを二冊買って、速達に出せるように包んで貰い、松田という人の和露も見ました。この和露は殆ど只一冊の信用出来るものだそうで、専門家も八杉氏のロワとこれとを並用している由です。二冊と[#「と」に「ママ」の注記]和英というのは光子さん夫婦への送別品です。一人で一冊はポケットに入れておかないと心細いのですって。この四日(明日)立って、四月一日にニューヨークにつくそうです。エイプリル・フールにつくのね、要心なさい、とからかったら、光子さんは正直者だもんだから、本当だ、やられるかもしれないね、と目玉をキョロリとさせました。六ヵ月いるつもりの由。それで 400 ドル。これは日本の金では千六百です。
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