実に計算が立たないような有様です、どうやってゆくかと思うようですが、そこは絵かきは重宝で色紙や扇がものを云うから、作家のようではないでしょう。とにかく広いところを夫婦で見て、名画と云われるものの実物をも見るのは結構です。
 和露は買いましょうか? あってよい本であることは確であるし。八円です。片上全集の内容目録は東京堂にもおいてない。おかしいことね。そして第一巻はありますが。すこし手間がかかりますが、とりよせて見ましょう。どうかおまち下さい。
 神田から十二月以来初めて戸塚へゆきました。実にこんなことは珍しい! おひな様でね、たあ坊に、小さい肴屋さんとおそばやさんの人形が買ってあるのを届けに。どうせ夫婦は忙しいにきまっていると思って行ったらやっぱり案の定。三時頃一緒に(稲ちゃんと)出て私はかえりました。春めいた日和でしたから、のーとした気で歩きました。
 そちらもすこしずつ外の空気に当れるようにおなりになればさぞいいでしょう。でも三月は一番よくない。誰でもそうでしょう? 私は春は好きでありません、変に目がコクコクして、のぼせて。八重桜が咲きつづいているのを眺めたりすると、まことに重くて
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