息子の着物をさしこに刺した話や牧場で牛乳でジャガイモを煮る話や、そんな話をしているのに爽やかで気が和んで本当に新鮮です。栄さんと二人でびっくりしてしまった。悧巧なひと、しっかりもの、情のふかい人、いろいろ傑作はありますが、ここにも一つの傑作ありという感でした。そして生活する地方というものは何と面白いでしょう。一日に一遍はパンにバタをつけたのとリンゴとソーセージぐらい、牛乳とたべるのですって。そして牧場で、ホワイトソースをこしらえかたを教えてやったら、十年やっている(牧場を)のにはじめてだって、草苅に手伝いに来た人はコンナどんぶりに六杯もたべました、美味い美味いってね。あっちに暮しているのは、親戚も多く皆から来てくれ来てくれと云われ、本当に楽しくて豊富でいいのでしょう。この息子がもっとしっかりしていると申し分はないのだけれども。四月の初旬までいるそうです。四月に旭川の技師の細君になっている娘が(妹娘。)赤ちゃんを生むのでその手つだいのためにかえるのだそうです。すこし暇が出来たら何かよろこばせることを考えるつもりです。
 達ちゃんの手紙、お話したようにあなたのお手紙を見ての分です。もう楊柳
前へ 次へ
全766ページ中138ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング