ものの人間的自主的な判断の必要など七枚。『婦公』の若い婦人におくる言葉一枚、というような工合です。去年は三田と法政の新聞に五枚、七枚ぐらい書いて未曾有の稿料レコード総計七円也。夏水道の水が実にとろとろしか出ない。実にそれではこまる、やってゆけない。だが、たとえ一筋でも出るからには、水道局は全く水を止めたというこごとは受けないでしょう。市民諸君が水をつかいすぎるから云々、と。今度市で、一定戸数に対する一定数の井戸を掘ることにきめました。防火・断水対策として。この家は、一つ井戸がありますがそれは今使いません。しかし裏の家主さんのところにあります。
 家、きのう、正門の前の自動電話の横を入って一寸歩いて見ましたが、全然駄目ね。きょうこれからおひささんを出して見ましょう。下駄の鼻緒を切らして、直してもらってからよくそこで下駄を直すお爺さんがついそちらの門前にいます。そこでもきいたらないらしい。すぐふさがる。六、二ぐらいの家である由、あの界隈は。西巣鴨二丁目という辺はきっとバタやさんが多く甚しいくねくね小路で空巣もあるらしく、何かききたいと思って格子に手をかけてもスラリとあく家はありませんでした
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