お目にかけましょうね。私も知らないから。
 それから三円のこと。思いつきになりましたか? 和英どうでしょう、一寸ほかに名案が浮びませんが。
 私の考えている小説は今日の母の心持です。いろいろうけている感銘があります。それが書きたい。心持の内側からね。健全さというものの生活的な地味な苦痛をしのんでいる本質について。華やかな時代のヒロインならざるものの生活を貫いている真実について。おととしの冬ごろに小説としては一番おしまいになった短篇で、若い良人をもっている若い妻の心持を、時代的な一般の不安の面から書いたことがありましたが。小さくても、主題ではなまけていない小説をかきたいと思って居ります。
 本年に入ってからは、この間お話したようなわけで、すこしずつかけてゆくらしく、『文芸』の日記(キューリ夫人の「科学はものに関しているのであって人に関しない」と云っている言葉への疑問、それを深めかねているエヴの作家としてのプラスマイナスなどにもふれ)十枚。『三田新聞』の、日本映画とその観客とのこと、所謂文芸映画のふくんでいる文学としての問題、映画としての問題、田舎へ送られる映画の種類の文化的質の問題、見る
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