いつも話しているラジオの小母さんは、実に自他の宣伝上手でまるでラジオで話す通りのアクセント、発音、変な無感覚性(きき手に対する)で話すの。実に可笑《おか》しい。それから作家でも吉屋信子の機智の土台のあの小説らしさなど。私は三宅さんのもっていた矛盾やその未解決さや生きかたの或正直さなどを話し、きっとそれもはたから見ればやっぱりにん[#「にん」に傍点]にあったことを云ったのでしょう。
稲ちゃんのところでは達枝ちゃんが今日三越のホールでおどりのおさらいがある由です。
今これを書きかけて思ったことですが、私たちは一つところに暮していないために、一緒に暮しているより一日の沢山の時間をお互のために(内容として)つかって居ます。本当にそう思う。こうして書き出して、私は決してもう書くことがなくなったと感じたことはないのですもの。あなおそろし。三時間ぐらいはいつも、です。これからは毎日すこしずつお話をしてゆくことにしましょうかしら。
『片上伸全集』のことね、私は文学史的な意味からも買おうと思います。谷崎精二氏が編輯に当っている由です。この人の些かの良心によって手紙も入れられたらしい様子です。内容見本
前へ
次へ
全766ページ中130ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング