ようなものです。人間が非人間な非合理な生活の条件に耐える力は実に根づよいが、それを正気で耐え得る人間というものも亦何と尠いことであろう。大抵が、何かの観念に逃げこむ。それで耐える。そのために、非合理な条件を改善する或は根絶させる力がそらされて、減じられてしまう。キリスト教の伝統のある精神の動きかたは、そのことをつよく感じさせますね。現代の神話もそのことをつよく感じさせます。
歩くのがまだ十分ゆかず。又本気な読書もすこし重い。それで、いろいろふらふら読書をしている有様です。
明日は売店が開かれてエハガキを買えます。早速お送りいたします。又あしたの予定は、すこし建物の内を散歩することです。二階の大廊下はからりとしていて心持がよいから。今私のいるい 号の上の部屋(真上ではありません)で父が亡くなりました。この病院は父がプランしたので、おれは慶応で死ぬ、と云っていた、そのとおりであったわけです。尤も自分が病人となって見たらいろいろ苦情が出てこの次建てるときはもっともっとよくすると盛に云っていた由。こちらの建物は旧館で、新館の方はもっと帝国ホテル流で私は気に入って居りません。こちらは白壁で、
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