部屋もゆったりとってあって、その代り室内に洗面の設備などはありません。
 ずっと風邪もおひきになりませんか、読書の材料は本当に相当なものですね。ヴァルガのは二冊でしょう? インドの本はいつか見て目についていた本です。明日繁治さんがゆきます。そして、七日か八日には寿江子がゆきます。私は七日ごろ家へかえると思いますが、外出はすこしおくれるから十五日ごろおめにかかれることになるのではないかしら。殆ど一ヵ月ぶりね。顔だけ見てはどこも変っていなくてきっとおかしな気がなさることでしょうね。

 一月四日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 慶応大学病院より(絵はがき三枚 (一)[#「(一)」は縦中横]同病院正門、(二)[#「(二)」は縦中横]同病棟大廊下、(三)[#「(三)」は縦中横]同全景)〕

 (一)[#「(一)」は縦中横]この門が信濃町に面した正門。つき当りの自動車のとまっているところが病棟の正面玄関です。この玄関を入ると、子供の群像が一つ立っていて、その正面後のドアからい号に入る。左手に(ドアの手前のホール)二階へ上る階段があって、そこからい号の上へあがるようになって居ます。上ってゆくと、休憩室のよう
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