わずに来てしまったのが如何にもおかしい。何だかあなたも笑えるような御様子でしたね。ユリのとんまなような、一心なような、滑稽ぶりを見やぶられたらしいと思います。
きょうは、皆が私に御褒美をくれるのですって。心からの御褒美をくれるのだそうです。大変にうれしいと思います。こういうことをされるのは初めてだから、私のためにみんながどこか私の知らないところでいろいろ相談して、呉れる人たちもよろこび勇んで、きょうを楽しみにしていて、サア、と呉れる御褒美は本当にたのしみです。虫退治も功徳を伴ったと笑えます。何をくれるのでしょう? 見当がおつきになりますか? 何でしょう。これこそその場にならなければわかりっこなしです。二人であけて見ましょうね。何か物ですって。
二月十五日
全く思いがけないおくりものでしたね。私は簡単に自分の誕生日と考えていたら。はじめ坂井さん、てっちゃんが来て、七時になってもほかの連中は現れない。もうおなかがすき切ってしまって、ポツポツおなべをいじっていたら、戸塚、昭和通、重治さんと一隊が入って来て、部屋の隅に長い丸い棒のようにまいたものを立てました。おや、とすぐなかみがわかった
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