らず以前には 2.30 位でしたのに。すっかりびっくりしてしまった。たった二箱で大抵の私の高価な買物の頂点になってしまうのですもの。ともかく二箱買っていろいろペンについて話していたら、まだオノトがあるということです。もし今にペン先がないようになったら、慌てるのは余り商売柄心がけがわるいから、ええと大決心をして到頭オノトを一本買いました。万年筆の中でオノトが一番ペン先が軟かなのですってね。十三日にお目にかけます。ごく見かけはあたり前のエボナイトのですが、ペン先の工合はこの字を御覧になってもわかるように割合弾力があるでしょう? その点では調子がようございます。オノトは元あなたが使っていらしたのではなかったかしら。これはペンを引こましてインクを入れたり、小さい金具を動かしてインクを吸上げるのでもなく軸をひっぱり出してギューと押すのですね、ひねくりまわしていたのはその操作のためなのでしたが、何だか馴れないの。ペキリと折りそうでこわくて。その上、私はインクをつけながら書くのが好きでもあるから今はインクを入れてないままつけて書いているところです。本当の書き初めを。金のベルトも何もないので軸が軽いし
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