地味だしどうもありがとう。やっぱりペンになりました。先にもペンという話があったことがあったから実現してようございます。この字はやっぱりヒンクスのGですが鉄の方です。もう一つアルミのようなのがあって、それだと字がちっとものびないの。この鉄のでもひっかかります。小さい字のためには苦情がありませんが、原稿紙へ、しっかりと明瞭な字を書こうとするとひっかかる。
万年筆の歴史を考えるといろいろに面白い。私が生れてはじめての万年筆をもったのは、多分女学校の二三年ぐらいのとき、こわれたと云って父の呉れたものがはじまりでした。金のベルト飾りがついていて、今思えばウォータアマンでした。私は珍しくてうれしくて、それを学校へもって行って作文のときだけつかいました。ところどころにポタリとインクのしみをこしらえながら、それでもうれしかった。次の万年筆は、初めて自分が原稿料というものを貰ったとき、文房堂でやはりウォータアマンを買いました。それはいかにもその頃の女の子の年にふさわしく小型のを。そしたら使うに余り便利でなくて、長い間持ってはいたがどうしてしまったかしら。原稿なんか一度も書きませんでした。それから、いつ
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