った。
 何か色の絵はがきを送って上げたいと思って、上野では暫く見たがろくなのがないからやめてしまいました。
 ところで、改造の本ですが、あれは品切れで(本やは絶版と云ったが)一寸手に入らないので、改めて古本屋にたのむことにいたします。三笠のは配本を中絶したので大変おそくなってしまいましたが、古いのお送りいたします。
 今六時がうつのに、まだ明るい。
 この手紙はまとまりのわるいようなものになりましたが、まだすこし気が立ったところがあるので、あしからず。そちらからはなかなか来ないこと。それだのに九日間かかず、それを知っていて、却ってごたごたやっている間に又のめのめ書くということが出来なかったのです。こういう心持も貴方はよくわかって下さると信じます。では又御機嫌よく

 四月二十三日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 目白より(封書)〕

 四月二十三日  第二十信
 きょうは小雨が降っている。静かな明るい雨。いろいろな緑の色が雨に映っているような雨です。
 きのうは、外へ出て広い空地の方へ行ったら小さい雨粒が一つポツリと額に当って、降らないうちにと大いそぎで、黄色い鼻緒の草履で歩いた。それでも家へ
前へ 次へ
全473ページ中63ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング