ゥりしか御覧になれないわけですから。
――○――
ドイツの哲学に対して正しい社会的見解を示している本の訳者が、その人のいつぞやの、横向き人生態度で、訳文が煩瑣になっているのは実にあらそわれないものだと感じて居ります。原文はたしかにもっと明確であるに違いない。訳者は思想をわがものとしていず、言葉をかきわけていないのだから。立派な古典とその日本訳者とを見比べると、今日ではよくも図々しく「訳した」と腹が立つのが多い。大抵そうだ。これも歴史の相貌の一つでしょう。いつか必ず訳し直されなければなりません。
〔欄外に〕
起床その他ちゃんと書きつけること、お約束を新たにいたします。
十月二十六日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 目白より(封書)〕
十月二十六日 第六十四信
ゆうべ夕飯を終って、『日本評論』別冊のスメドレイの「第八路軍とともに」の終りをよんでいるところへ、おひさが一束の手紙をもって来ました。その一番上にあなたからのがのっている。何と珍しいことでしょう、宵のくちのこんな時刻にあなたの手紙が来るとは、私は何だか部屋の敷居のところへ、電燈の光を肩に浴びてあなたの姿が立った
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