ヰしぶきを立ててあちこち眺めたり。愉しい、愉しい気持。
 こういう爽やかな、優しさと力に溢れたような情感の全身的な水浴を、あなたにも時折はさせて上げているでしょうか。私の人間としての質量が小さくて、もしそういう横溢の中にあなたを包み、新鮮にしてあげることが稀だとしたら、本当にすまないわけですね。
 汲めどもつきぬもの、滾々《こんこん》と湧き出づるもの、私は貪慾だから、私たちの生活にあるそういうものを実に愛します。この頃特にそれが強くなって来ている。噴きぬき井戸が正しく真直に水脈の上に掘りぬかれていて、その上を風が吹けば虹色の立つ水が溢れるということは、大事なことです。曲りくねって、滲み出して、じめじめしたあふれ水はいやです。
 勉強のこといろいろ有難う。私は小説家ですからという気持は大分減って来ているのですが、昨今感じるところあって、文学というもの(少くとも昨今文学と思われているもの)に対して、一層つよい疑いを抱いています。昔小説をかきはじめた頃、所謂文壇の作家の生活気分や作品やに対して本能的な不調和を感じていた。当時は、私の世界的基準はトルストイでしたが。つくってゆく小説、人間とし
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