lえられたんじゃないんですか」「そういうの、わるいと思う。だって、現実の気持のそれを、ああいう形で、あんな重大な、妻のああいういきさつに描いて卒業するなんて!」
 作家のエゴイズム以前にある男のエゴイズム、それを感じていない作者。菊子さんもそれには異論なかった。
 人間のいきさつ、心持、それを人並より潔癖であるとされている作者でも、環境とその自省の鈍磨、いい痛棒のくらわし手がないと、こういう極めて人間の真髄的な箇所で、潔癖の反対になる。そういう致命的な鈍りが生じていることを志賀さんは知っているだろうか。
 この頃のチミモーリョウの跳梁《ちょうりょう》をいやがって「文士[#「文士」に傍点]は廃業だ」と憤然としているという面だけで、一作家としての彼は語りつくせたと云えません。又こんな数になってしまった。では又
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 〔一枚目欄外に〕
「奥さん、そんなの読んで黙っていられるかしら」
 よまないのですって。一度何かよんでコリてから。
 石坂洋次郎論の「若い人」の中で江波という娘を見る評者の甘さから、ケンカをやる戸塚の夫婦の生活と、何たる相異でしょう。
 〔十三枚目欄外に〕

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