きました。達治さんも十一月三十日には除隊になったでしょうから、島田もさぞおよろこびでしょう。
 あなたの冬用の厚ぼったいドテラが今縫いあがりました。フランネルじゅばんと入れます。どうかそのおつもりで、不用の袷《あわせ》類を下げてお置き下さい。
 さむくなりましたが、今年は去年より概して暖いのではないかしら。きょうなどなかなかおだやかな日です。
 盲腸など大変きらいです。少しひまなとき、そして健康状態のいいとき、切ってとってしまって置こうかと思います。こんなアナーキーな突発的な虫を体に入れておくことは何とも承知出来ない。いろいろ条件がわるく重なったとき、又きっとやるのだから。近日又ゆっくり常態で書きますが、今日は文字通り同病の誼《よしみ》による御機嫌伺いを申します。

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[自注23]ベッドの上で手紙をおかきになる――病監には机がなく、ベッドの蒲団の上で手紙を書いていた。
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 十二月十二日 〔市ヶ谷刑務所の顕治宛 駒込林町より(封書)〕

 十二月十二日  第二十二信
 十一月三十日づけのお手紙を十日の朝いただきました。このお手紙ではまだ私の
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