獄中への手紙
一九三六年(昭和十一年)
宮本百合子
−−
【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)曰《いわ》く付《つき》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)森|杏奴《あんぬ》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#二の字点、1−2−22]
〓:欠字 底本で不明の文字
(例)〓〓〓何て云いわけをして上げる?
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四月十五日
今晩は。
いま、夜の八時十分前。一九三六年四月十五日。慶応の病室。スエ子は緑郎の作曲が演奏される音楽会へ出かけてゆき、私ひとり室の隅の机に向って、これを書いて居ます。
ゆうべから、私はこの風変りな手紙を、これ迄いつも貴方へあげる手紙を書いていた時のような楽しんだ心持で書きはじめる仕事に着手しました。三月二十四日に予審が終った時、私は外に出たら何よりも先にあなたのところへ出かけてゆき、過去一年間の様々の経験の中から積み重ねた成長の花束を見せて上げたい、見て欲しいと思っていたのですが、公判がすまないうちは面会も手紙
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