んだ。
三日ばかりで、組合の男の同志は月島署へまわされた。
看守が残った女の同志に、
「君ァ、鳩ぽっぽ(レポータア)かと思ってたらどうしてなかなか偉いんだそうじゃないか」
と云った。
「――鳩ぽっぽだわよ」
そして、濡手拭を頬に当てたまま、ふ、ふと静かに笑っている。
自分たちは、段々いろいろのことを話すようになった。
「――入って来たらまだあなたがいたんでびっくりしたわ、とっくに出たんだろうと思ってたのに……」
「仕様がないから悠然とかまえてることさ」
中川が金のことで自分を追及しはじめて間もなく、主任がこんなことを云った。
「ああ、そう云えばあなたの家でつかまった帝大生、ここにいる間は珍しい位確りしていたが到頭|兜《かぶと》をぬいだそうだよ」
自分は冷淡に、
「ふーん」
と云った。
「あのくらいの大物で、あんなに何も彼も清算するのは近来ないそうだ、びっくりしていたよ」
「…………」
六十日以上風呂にも入れず、むけて来る足の皮をチリ紙の上へ落しながら、悠然とかまえてることさと云う時、その主任の云ったことを焙るように胸に泛べているのであった。自分は、金のことを云わなければ
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