ソヴェトにしたのだから……」
「ふむ……」
仄めかされた数言は次のような内容に大体釈訳されるのであった。即ち赤松は軍部の指令によって或る革命的カンパニアの日にでも、暴動を挑発する。==総同盟系の反革命的労働者を煽動して、一定の公共物を襲撃させる。すると、直ちにそれを共産党の蜂起とデマり、鎮圧の名目で軍隊を繰り出し、市街戦で革命的労働者、前衛を虐殺し、それをきっかけに戒厳令をも布く。そのような計画が予定のうちにあるキッカケの為に、赤松は総同盟の労働者を最も値よく売ろうとしている、と云うことなのである。
留置場に戻り、檻の内を歩きながら、自分は深い複雑な考えに捕われ、時の経つのを忘れた。
「働く婦人」などは、もっともっと目に見るように支配階級のこういう陰謀を摘発し、赤松らの憎むべき役割の撃破についてアジプロしなければならぬ。そう思うのであった。
梅雨期の前でよく雨が降った。中川は十日に一度ぐらいの割で、或る時はゴム長をはいてやって来た。同じ金の問題である。
「君は、さすがに女だよ。もちっと目先をきかして、善処したらいいじゃないか。心証がわるくなるばっかりで、君の損だよ」
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