連盟が参加した三・一五記念の汎太平洋プロレタリア文化挨拶週間の催しの一つとして「働く婦人の夕べ」をやった時などは、開会一分で、中止、解散、であった。自分がやっと「今日ここに集っていらっしゃる方を見ても若い方が多い。お婆さんは」と云いかけたら、中止! であった。余興は講演とは別に許可をうけ、どれも皆数度公演ずみのものだのに「公安を害す」と禁止した。
現に地方などでは、「働く婦人」を一冊とるだけにさえうるさく妨害しているのであった。
「……指導は誰がやっているんですか」
やがて清水が煙草に火をつけて訊いた。
「誰が指導するということはない、編輯会議でするんです」
「しかし、指導しないでこんなに高度になって来るわけはない。ね、――例えばこれを御覧なさい」
清水は「働く婦人は今度の戦争をどう見るか?」という特別投書欄の鈴木桂子の文章の上を叩いた。
「え? こりゃ一目見たって素人が書いたものじゃない、誰です」
「鈴木桂子と書いてあるじゃありませんか」
「鈴木っていうのは何者だ」
「知りません。投書だもの……」
自分は、
「一寸考えても御覧なさい」
と云った。
「あなたがたは、高度になった
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