か※[#感嘆符二つ、1−8−75]」
「…………」
「え? 君の小説こそ読ましてもらいたい。僕はこれでもずっと夏目漱石や君の小説は読んでいたんだからね。……立派に小説が書けるのにこんなもの[#「こんなもの」に傍点]へ書かなくたっていいんです。え? そうでしょう?」
 これは事あたらしく清水がいうばかりではない。中川も云い、駒込署の主任も云う。そしてブルジョア批評家の或るものも同じように云っているところなのである。押し問答の間に、半面が攣《つ》れたような四角い顔をした清水は、
「ヤ、すみませんが……ヤ、これは恐縮です」
など主任に茶をついで貰っている。
 号外の方は小一時間で終った。今度は、ケイ紙などと重ねて机の上に出してある「働く婦人」をとりあげ、片手でワイシャツの腕を、かわりがわり引きあげた。
「これは、あなたが編輯責任ですね」
「そうです」
「こちらも無茶なことは云わんつもりですから、あなたも、これについては責任を負って貰わなくちゃならん。いいですか?」
 自分は、
「私が納得出来れば負うべき責任は負います」
 そう答えた。
「でも、お断りしておきますが、その点できっとそっちの意見
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