う名からして中年の寛容な父親を思わせる様なのに、くるくるとまといつかれても一向頓着しずに超然として居る様子が如何にもいい。
 知らないうちに、昔の御大名の毛鎗の様な「けいとう」だの、何とあれは云ったか知らんポヤポヤした狐の尾の様な草も沢山断りなしにはびこって居る。
 あんまり雑草にはびこられたので、十本ほどあったカアネーションは消えたものと見えて、何処にも見あたらない。
 苗床と苗床との間を一杯にコスモスがひろがって居るから入って見る事も出来ない。
 今の分では花などは咲きそうにもないから一層抜いてしまった方がいいかとも思われるが、水々しく柔いその葉を見ると、流石そうも仕かねる。
 鶏舎に面した木戸の方へ廻ると十五の子の字で、雨風にさらされて木目の立った板の面に白墨で、
 花園(第一号)
  園主
  世話人
  助手人
と、お清書の様にキッパリキッパリ書いてある。
 微笑まずに居られない。
 気がついて見ると鶏舎の戸にも「養鶏所」と麗々しく書いてある。
 身丈なんか私共より高くなって、太い如何にも男らしい声を出して居る子が、何でも人並みにとりあつかいたがる気持が面白い。
 毎朝鳥の餌
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