で食物をこね返して居る貧乏な婆の様だ。
秋の声を聞くと何よりも先に、バサリと散る思い切りの好い態度を続けて行かないのかいやになる。
ドロンとした空に恥をさらして居る気の利かない桐を見た目をうつすと、向うと裏門の垣際に作られた花園の中の紅い花が、びっくりするほど華《はで》に見える。
鶏が入らない様にあらい金網で仕切られた五坪ほどの中に六つ七つの小分けがつけてある。
此処も夏の中頃までは手入も行き届いて居たし、中のものも、今ほどめっぽう大きくなって居なかったので、青々と調って気持がよかったが、もう近頃は何とも彼んとも云われないほどゴチャゴチャになって居る。
背がのびる草だからと云って後の方に植えて置いたコスモスがいつだったかの大風でのめったまんまになって居るので、ダリヤだの筑波根草だのと云うあんまり大きくないものは皆その下に抱え込まれてしまって居る。
八つになる弟が強請《せが》んで種を下してもらった□□[#「□□」に「(二字分空白)」の注記]はやって置いた篠竹では足りなかったものと見えて、後の槇の梢まで這い上って、細い葉の間々に肉のうすい、なよなよした花が見えて居る。
槇と云
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