イスラエルの民のように
父なる天に溶け入るのだ。
文明人
可笑しな 文明人
何故 あの人々は
アラビヤ人のように胡坐を組んで坐らないのでしょう?
胡坐はよい。
わが 小さい体の下にも
強い大地があるを感じ
空は 猶高く、仰がれる。
草を見るのに
窮屈にかがますと
首を延し、自分の仲間で茎を見られる。
地を這う小虫も
麗しい五月の 地苔《こけ》も
皆、すぐ 体の囲りで
ささやかな 生を営むのだ。
高く 高く 安定のない魂は寂しい。
救われる道がなく寥しい。
空は円く高く 地は低く凹凸を持ち
人は、頭を程よい空間に保って
はじめて
二つの心が、謙虚な霊を貫くのだ。
心
自由に 自由に
何処までも 行こうとする心。
十三の少年のように
好奇に満ち、精力に満ち
野蛮な わが心。
しとやかな女と云う
仮の区別は私を困らせる。
妻と云う
奇妙なさだめは、私に溜息をさせ、笑わせる。
光りのように閃めき、跳び 貫こうとする我心
本体は我にさえ解らず
間抜けた侍女のように
いつもあとから「我《が》」が
実質の 影を追うのだ。
鶏
裏の小屋の鶏
真昼 けたたましい声をあ
前へ
次へ
全13ページ中11ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング