四千三百万ヘクター
 一九三一年   六千五百万ヘクター
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 ただ大規模な農場機械をつかって、耕し、蒔き、苅りとるというだけならそれは、アメリカの大経営の農場がとっくの昔にやっている。だがアメリカで精巧な農業機械は農業労働者に何をもたらしているか? 一九二九年秋以来アメリカには農村恐慌がある。
 ソヴェト同盟の耕地に一台トラクターが運転されることは、直接集団化された農民に何割かの確実な収益増大を約束するばかりではない。トラクターと一緒に文化がやって来ている。
「ギガント」から一時間ばかり汽車にのっかって行くと、「ウェルブリュード」という国営大耕地の真中に、農業機械専門学校がある。建ったばかりの校舎、寄宿舎、労働者住宅などが快活に花園をかこんで窓々を開いている。男女の学生、未来の技師たちは、五年以上職場にいたものに限られている。
 ロストフ市の郊外に新しくプロレタリア文化の壮麗な城のような「セルマシストロイ」(農業機械製造)の大工場都市がある。これは純然たる社会主義都市計画によってつくられた町だ。
 明るい、電化された大工場を中心に共同食堂がある。消費組合売
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