、麦輸送の「エレバートル」の高塔が白く燦いている方を眺めた。キャンプの車輪の間の日かげへ寝ころがって、休み番の若い農業労働者が二、三人、ギターを鳴らして遊んでいる。
 郵便局、農場新聞発行所。労働調査のために医員が出張して、一つのキャンプを試験管や血圧検査機で一杯にしている。
「ギガント」事務所のわきにフォードの幌形自動車がとまって、踏段に片足かけ、パイプをほじっているのは、縞シャツのアメリカ技師だ。洒落《しゃれ》た鎌と槌との飾りをつけた小屋に、国立出版所の売店が本をならべている。――
 大体ソヴェト同盟の五ヵ年計画は、いろいろと予想外の飛躍をもって進展しているが、例えば農村における集団農場化の問題がある。
 これは、ソヴェト同盟の最も積極的な勤労者が期待したより更に成功的に行われている。
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集団農場に組織された農戸数
 一九二八年     四〇〇・〇〇〇
 一九二九年   一、〇〇〇・〇〇〇
 一九三〇年   六、〇〇〇・〇〇〇
 一九三一年   九、〇〇〇・〇〇〇
播種面
 一九二八年     二百万ヘクター
 一九二九年   六百五十万ヘクター
 一九三〇年
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