訊問もなければ、宣伝もねえ。俺等んとこじゃどうだったね? このコンムーナへ徒党が押しよせたってことが伝わった時、四十露里あっちから赤軍分遣隊がやって来て呉れた」
「えれエ小面倒な名前だよウ」
 そう云ったのは五十九のティトフだ。
 ブリーノフが云った。「パンフョーロフは集団農場のことを聞いてはいるらしいが、そばで暮したことはねえらしい」
「こうだべよ」
 ザイツェフが云った。
「作者は村を旅行したのよ、手帳に書えたのヨ――ホーレ、それがこの小説だ」
「たまらねえ程無駄だらけだ」
「よこ道さそれてる」
「本のどこにも、集団化がねえ!」
「思うに『貧農組合』は貧農をまっとう[#「まっとう」に傍点]に書いていねえ。何故この小説に、本当のたち[#「たち」に傍点]のいい貧農は出て来ねえんだ? 貧農はどれでもシュレンカみたよなノラクラ者ばかりじゃねえんだ!」
「この世の中に『貧農組合』みてな組合はねえヨ」
等々。遂に、彼等の結論はこういうことになった。
(一)農村にはいらない本だ。
(二)実際の仕事に関係あることは殆ど書かれていない。ちょいちょい区切って、ところどころ読んで行く分には読める。退屈で
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