あった。激しい、飛躍的な、恐ろしい程豊富な時代であった。どんな平凡な一市民も、この時期には生涯の思い出となる経験を、朝から夜まで二十四時間の内とも思えぬくらい経験しつつあったのだ。
書きつけて置きたいことは山ほどあり、しかも現実生活の展開は迅速で、革命に鉛筆を握らされた作家たちは、自分以上の力にもえたって仕事をした。書いた。革命の歴史的瞬間に全存在を引つかまれた作家たちは、自分が革命の情熱にとらわれた、そのとらわれかたについて周密な自己批判をしている暇なんかもっていなかった。グラトコフは「セメント」を書いた。ヤーコヴレフは「十月」を。イワノフは「装甲列車」を。リベディンスキーは「一週間」を。ピリニャークは代表的な「裸の年」を書いたのである。
各作家めいめいが、めいめいの傾向のままにそれ等を書いたのであったが、十月革命は、その発展の日常具体的な過程によってあらゆる個人を集団へ、集団的行動の中へと召集した。どんな作家達でも、革命の実践が教えた集団の価値、行動のテンポを自分たちの作品の中へ反映させずにはいられなかった。それは、世界のプロレタリア文学にとって新鮮な、生気あふれる豊富な前進で
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