ある。
 婦人部の機関紙『労働婦人と農婦』に掲載される読物の多くは、女流作家によって書かれたものだ。
『|若い親衛軍《マロダーヤ・グワルディア》』『|赤い処女地《クラースヌイ・ノーヴィ》』などという雑誌に、或る工場内の文学研究会から推薦された労働者の小さい作品が発表されることもある。
 いきなりそこから、完成した芸術作品の生れることを期待するのは無理であるけれども、同時代の専門家によって作られる作品を、自分の階級の芸術として一般のプロレタリアートが鑑賞し、再吟味し、果して自分達の生活を再現している芸術かどうかについて、少くとも批判するだけの下地と余裕とは、もう充分つくられて来ているのだ。同時に、未来の作家は、まだ工場学校生徒、共産党青年部員として、そういう芸術的啓蒙をうけつつ、クラブの研究会で育っている。
 ところで、作家の側では、ソヴェト同盟の社会的生活がじっくり腰を据えた建設時代に入るにつれ、プロレタリア芸術の発展のために必然な、種々な困難にぶつかりはじめた。
 一九一七―二一年。
 この四年間は、生れてそのときまでものなんぞ書いたこともない人間に、思わず鉛筆を握らせるような時代で
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