だとか、教師だとか、本屋の売子だとか、そういう人々が面白いぞ、とか、いいぞとか云うものを、そのまま読む癖がある。
 トポーロフが注意ぶかく観察すると、そういう村の知識分子は決していつも正しい文学批評の根底をもっているとは云えない。時にはずいぶんインチキな本を流布させる。
 ソヴェト同盟は今こそ人間の歴史がこれまで知らなかった新しい社会の建設の途中にある。農村の新しい生産方法は新しい生活様式と文化を育て、プロレタリアートと農民とは社会主義社会というものについて生々として新しい世界観をもって、新しい階級人として互に結合しつつ生れかわりつつある。
 よく選ばれた文学は、長ったらしい数字だらけの演説より勤労階級の心をつかまえる。いい一冊のプロレタリア小説は社会主義社会の建設に向って鼓舞するつよい力となる。トポーロフは、経験によって農民が文学に対してなかなか独立的な批判力をもっていることを知った。都会の或る種のプロレタリアートや学生なら、例えば或る作家の作品をよんでいろいろ不平が出ても、
「だが諸君。これはゴーリキーがとても褒めてるんだぜ」
というと、或るものは、ゴーリキーまかせにしてしまうよう
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