。それは、ヴォルガ地方だ。ヴォルガ地方がソヴェトの動力です。モスクワで、ソヴェトの生粋の人間なんかは見られない。モスクワには商人《メシチャニン》か、小ブルジョアしかいません!」
思わずわたしは笑いだした。
これは余り、農民作家的ではないか! この男は、世界革命はヴォルガ沿岸地方からだけ、というような口ぶりだ。一般的に、農民作家の地方偏重の傾向、都会への偏狭さが屡々批判されるが、この作家の言葉にもよくあらわれている。
一九二九年の、激しい農村の階級闘争、富農征伐のとき、どちらかというと、右翼的誤謬をもち易い農民作家団の中に「工業化主義者の職場」という、左翼的スローガンをかかげた一団が現われた。
一見このグループの立場は進歩的であり、発展の線に沿ったものらしく見えた。ところが、その内実が明らかになった時「ラップ」とソヴェト大衆とは、この階級的なスキャップ団の清掃のために少なからぬ時間と精力とを費した。彼等の工業化は、彼等の反革命的目的にかぶせた仮面であった。富農の勢力拡大と階級擁護のために、そのような名をかぶった一味がトラクターを富農の手に騙しとり、集団化を阻害しようとした。彼等が
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