建設しようと努力する社会主義社会での土地関係の必然性は農民の多数、特に富農には把握されなかった。
強制徴発をされては間尺《ましゃく》に合わないと家族の食うだけの麦しか蒔かない、やっと食うだけのジャガイモしか植えない。麻なぞ作って骨折るだけ損だと麻畑は荒廃にまかされた。
ソヴェトの工業はどこから必要な四七パーセントの国内的原料をとって来たらいいのか? 工場は完全に革命的労働者に管理されながら原料が足りない。軽工業生産品が出来ないから、したがって農民の買わなければならない消耗品が欠乏する。こんな不自由はいよいよ馬鹿らしいと、農民は、益々播種面をちぢめ、耕地に草は伸び放題。ソヴェト生産の鋏は、順当な交互作用を失って開きっぱなしという危機に立ち到ったのであった。
一九二一年の果敢な新経済政策《ネップ》は、この生産関係の調整のために敢行された。新経済政策は、農民には場合によって八時間以上の労働と、土地の貸借、他人の労力の雇傭、生産品の自由売買其他を許した。反動的な農民は、当時ソレ見ろとばかり心で手を打った。富農は土地の賃貸《ちんがし》をはじめ――再び富農に搾取される小作人がソヴェトの耕地に
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