現れた。小麦、バター、麻、羊毛あらゆる農業生産品の買占人が跳梁しはじめた。
こうして二年三年経つうちには、富農は反ソヴェト的な利害をもった農村の階級として、意外に深い根をおろした。一九二八年の秋を見るなら、我々は立ちどころに彼等の擾乱作用を理解するであろう。ソヴェトはその播種面をヨーロッパ戦前の九五パーセントまで回復していたのに、前年より一億プードも少い麦を、而も強制買付けで辛うじて買い上げている。
この年ヨーロッパへ麦を輸出することが出来なかった。それどころか、アメリカから買い込んだメリケン粉袋が埠頭に積んであるというデマさえ飛んだ。
これは、富農と買占人の奸策が成功した結果であった。
前の年から、ソヴェト政府が累進税で富農の私有財産制への実際上の復帰を統制しはじめた。その復讐だ。
ソヴェト生産拡張五ヵ年計画は、複雑な農村社会主義化の実践へ根強い組織力で迫って来た。
先ず、耕作用トラクター七万台が進出した。
「トラクター中央」を囲むいくつかの集団農場が、生産手段の工業化につれて、労働の種別基本賃銀による共同労働、共同食堂、共同住宅、クラブ、託児所をもって、これまでと全然違
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