いて、命をまとにソヴェト権力を守らした。――フー! 何が農民の土地だね! 昔あ地主に作物をとられた。今じゃ政府だ。その間に何の違いがあるかね? 昔あ年貢が不足すりゃ鞭打ちですんだ。コンムニストは鞭の代りに書付を出しくさる! そして監獄だ! フーッ!」
 土地を農民へ。ということを階級的意識の低い、農民のあるものは、本質を全く反対に考えていた。土地を皆に分け取りにして、取った土地で稼げば稼いだだけ自分の身上を肥やしてゆけるようになるのだとカン違いしていた。社会化した土地の利用ということの代りに、今度は自分達が地主となって元の地主からとった土地を分け合えるものと、旧い私有財産制に毒された理解に執していた。このため一九二一年までの単一経済組織における農産品の現物税徴収では、ソヴェト政府と都会のプロレタリアートとが大難儀を経験した。
 工場に働く労働者とまるで伝統が違い感情もちがう多数の富農・中農民は、永年に亙る非人間的生活にうちのめされ、個人的な打算以外の考えかたを持ち合わせていない。「十月」を自己流に考えて得だと思ったから、革命的な貧農と共に、のり越えた。が、いざとなるとプロレタリアートが
前へ 次へ
全121ページ中54ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング