始めた。スーラーブをさがして、一人の兵卒が馳けて来た。
「万端用意が整いました。御命令を待つと申せということです」
スーラーブは、黙ってうなずいた。イラン方でも、先刻から統一ある運動が開始されていた。二人ばかり騎馬の戦士が、活気ある様子で彼方此方騎り廻す前後に武器を執った兵卒が、そろそろ隊列を整えかけていた。それ等の黒い姿や馬の蹄の下から時々ぱっぱっと、白い砂埃が蹴立てられるのまで、総て小さく手にとるように見える。
三十七
ツランの全軍の三分の一が、四列縦隊で高地を降り始めた。スーラーブは、栗毛の馬に騎って兵等の進行を見守った。遠くの方は、見わけのつかない揺れる頭の上下する流れに見えた。それが一種重い響を伴って迫って来彼の目の前を通り過ぎる瞬間、一人一人の顔つきが、奇妙に鋭い印象でスーラーブの眼に写った。或る者は髭ばかりのように、或る者は、じっと彼を瞶《みつ》めた二つの眼ばかりの者のように。すぐ、また後から別な、特殊な表情の顔が続いた。前の印象は消えた。これを見ようとする間に忽ち行きすぎた。次へ、次へ。そして、兵等は黒い、緩慢な瀧のように絶間なく降りて行く。平地
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