暫くが、自分の運命には些の恩沢も与えようとせず、冷然と、ついそこを通りすぎてしまうのか。スーラーブは、ふけた顔付きになり、逞しい若い胸の奥で身ぶるいをした。暗い眼で、しげしげと無標の天幕を瞰渡した。その間に、捕虜は、私かに彼を偸見た。男は、凡そ見当はついていたのに癪で真直云えなかったのである。なぐられないのが、男にとっては意外であった。そして、スーラーブの顔付を見たら、彼の感情は動いた。何かまるで淋しそうな色が、スーラーブの体全体に満ちていた。正面を向いたぎりで、男は、同情に似た静かな光を眼に泛べたが、スーラーブが、彼を見そうにすると、はっと彼の顔は変った。スーラーブは、顎をつき出すように、太い頸を牡牛のように構えている捕虜をじろりと視た。そして、手を振って、彼方に行けという合図をした。捕虜はその方を向き、スーラーブの側を通って陣の奥へと歩き出した。カタ、カタ、木の足枷が鳴った。スーラーブが、高地の端でこんな時を費していたうちに、陣の後方では、着々、戦端を開く準備が進められた。大天幕を、足早に多くの兵が出入し、伝令が、隊から隊の間を駛《はし》った。亢奮した空気が、ツランの陣中にざわめき
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