で云った。
「大将、わが大将、――礼」そして、自分のツランの礼の形をして見せた。
スーラーブは、厳しく手を振って、眇の男を追のけた。彼は先に立って歩み出した。
「此方に来い」彼等は、足枷の許す緩い歩調で高地の出端まで来た。其処からは、朝の光の海の裡に一目でイラン方の陣が瞰下せた。幾つもの天幕が起伏した間に平地の上を行き来している兵卒の姿までくッきり見えた。スーラーブは、暫く黙って眺めた後、捕虜に云った。
「卿に尋きたいのは、どの天幕が誰のかということだ。あの大きな旗を立てたのは、イランの王の天幕か?」捕虜は、スーラーブの横に、一歩ほどしざって佇んだ。彼は、顔を正面に向けたまま、まるで感動を示さない調子で答えた。
「そうです」
「あの、黒い鞁天幕は? ずっと右手」
捕虜は、頸を動かさず、瞳だけ其方にやった。
「――ギーウ」
スーラーブは、思わず、「ふむ」と満足の鼻息を洩し、顔が赧らむのを感じた。彼は、こんなに素直に捕虜が云ってくれるだろうとは夢にも思っていなかった。彼の希いはもう一つで満されるところまで来た。
スーラーブは、速くなった鼓動が自分だけにしか感じられないのを幸に思いな
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