みしている者があろうなどとは夢にも知らず、若者はくつろいだ風で卓子《テーブル》に肱をついていた。此方に向いている引緊った、きめの細かい片頬から顎にかけて、斜めに灯が照している。やや憂鬱な黒い眼は、時々灯かげをちらつかせながら、じっと前方に注がれている。ゆるく開いた上着の襟元から、ルスタムは、色沢のよい健康そうな若者の頸を、胸の辺まで見ることが出来た。
幅のある胸、確かりした肩つき、鍛えられ、しかも、未だ塵にしみない青年の、何ともいえない新鮮な感じが、空気のように四辺に漂っていた。眉宇の間、心持大きめに緊った口元あたりに、品のよい、気位さえ認められる。何処となし、若者の態度に、真面目な重々しいもののあるのが、ルスタムに快感を与えた。微塵も、卑しげな粗忽らしいところはないが、消すことの出来ない青春の焔がとろとろとしんに燃えてい、温かい、熾な見えない虹が立っているように思える。
三十一
ルスタムの老た胸には、油然として羨望と一種の哀傷が湧き上って来た。
期待に期待した、最初の覗き穴からの一瞥が彼の予想にそわないものであったため、強者の感じは一層深められたのかも知れな
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