た棍棒をとりあげた。そして、山地を歩きつけた人間の、根気よいむらのない歩調で、ツランの陣地へ向って歩き出した。篝火が彼を遂に誘い出したのであった。
三十
ルスタムは、目立たない、足の裏の柔かい獣のように、音もなく高地の一角から、ツランの陣に忍び込んだ。彼は幾度もの経験で、ちっとも行動をいそがず、注意深く自分の体を扱った。篝火の近くをさけ、出来るだけ眠っている兵のかげへかげへと廻り、這うように中央の大天幕に近づくと、彼は暫く四辺の様子を窺った。遠くから見えた燃火は、丁度天幕の入口に近く燃《た》かれていた。
風のない夜で、焔が真直に立昇る囲りに、ざっと十人ばかり武装を調えた男が胡坐を組んで坐っていた。ルスタムの隠れ場所から、正面に焔を浴びた髭の濃い男の顔が見えた。彼等は、皆黙って、折々枝切れで火の工合をなおしたり、戎衣《じゅうい》の間から何か出して、隣のものにやり、自分でもぽつぽつ前歯で噛んだりしている。ルスタムは、一目でその方面は断念した。彼は、反対の大天幕の裏に目を遣った。その側には、旅嚢でも置いてあると見え、まるで警戒されていなかった。五六人の兵が、互の胴に頭
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