巨大な磁石で自分の体の其方に向っている半面が、ぐいぐい引きつけられるような危さを感じた。
 彼は、それに抵抗しようとするように、努めて、其方に背を向けた。そして、四五間元来た方に引返えしかけた。が、彼はぴたりと立停った。闇に浮き上って見える纏布の頭を重く垂れて、何か考えた。――再びルスタムは、ツランの陣に向って立った。彼は、せかない足どりで、最前線に燃火を囲んでいる哨兵の一団のところへ行った。彼は、其処で一本の軍用棍棒を借りた。それを持ってルスタムは、誰の眼にもふれない曠野の真中に出て行った。イラン軍の篝火もかなり遠く見える処まで来ると、ルスタムは、星明りに眠い陰気な陰翳を落している一つの叢を見つけた。彼はその傍に胡座を組んだ。そして、頭の纏布をはずし始めた。彼は、それを手早く解き、平の兵卒風に脳天を露出させて巻きなおし一方の端を頬に触るる位垂した。次に上衣を上から帯で締めた。フェルトの長靴をはいた足拵えをしなおした。すっかりすむと、ルスタムは、立上り、ツランの真似をした衣服や纏布の工合を試すため、幾度も腕を上下して見、頭を振って見た、何処もちゃんとしていた。
 ルスタムは、地面におい
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