々空気は重く、濁って来た。王も疲れが出たと見え、十文字脚の腰架の上で時々こくり、こくりと居睡りを始めた。ルスタムは、ギーウと低声にぼつぼつ話していたが、それを見るとそっと腰架をずらせて立ち上った。彼は、目顔でギーウに、自分の去ることを示した。そして垂幕をかかげ、王が目醒るのをおそれるように、いそいで天幕を出た。
二十九
一歩外に出ると、ルスタムは、思わず胸一ぱいに息をすい、心からのびのびと伸をした。天幕の中と違い、夜の野天の限りない広さには、すがすがしい、涼しい空気が満ちていた。熾だった燎火も消え、処々に、低く篝火が燃えていた。周囲に、哨兵の起きている姿が黒く見えた。四辺一帯寝しずまって、闇の中から、入り混った幾つもの人間の深い寝息、微かに馬が脚をずらす響などが伝わって来る。息の音ほかしない地面から見上げると、空に燦く無数の星が実に活々、命あるもののように見えた。瞬く毎に、サッサッ、サッサッという活動の響がふって来そうに思われる。
ルスタムは目を移して、ずっとツランの陣を眺めた。彼方にも、極僅しか篝火は見えなかった。後に樹林を負うている故か、まるで暗く、高地全体
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