スタムは、余程経ってから、のろのろ、何かに気を奪われている風で馬の頭を立てなおした。陣地と定った場所では、兵等が罵り合い右往左往して、幕営の準備をしていた。ルスタムは、混雑した荷騾馬の群の横や、地面に積上げられた食糧の大袋の山をよけ、彼方の天幕に戻った。
 その晩イラン方では、戦捷の前祝に簡単な祝宴が催された。大きな燎火が、澄んだ曠原の夜の空を一部分ボーッと焦している下で、兵卒等はぐるりと幾つもの円い輪に坐り、てんでに果物酒と堅焼煎餅とを前に置いて、喋り、笑い、或る者は、歌を謡った。火かげにかがみ込んで、分配されたそれらの酒や煎餅を賭け、一心に、肱で邪魔な見物をつきのけながら、骰子《さいころ》を転がしている者もある。
 ルスタムは、日暮から王の天幕にいた。けれども、彼は何となく四辺の空気になじめず落ちつけない心持がした。上機嫌な王の酔った声をききながらも彼はちらり、ちらりと、夕やけにきらめいていた兜の光を思い出した。それを思い出すと、ルスタムは、妙に見のこして来たものがあるような気持がした。そして、天幕の裡の酒と香の匂いが鼻につき、居心地わるく感じるのであった。
 夜が更けるにつれ、段
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