。天幕に入って見ると、王は至極落付かない風で、手を後に組み、寛衣の裾をけって彼方此方歩いている。彼は、ルスタムの入って来るのをじろりと流眄で見、歩きかけた廻りをつづけた。
ルスタムは、辛うじて、定規の礼を行い、頭を擡げると同時に口を切った。
「王、唐突な願いですが、何卒御所持の、あの血どめの秘薬を、御恵み下さい。只今ギーウに願わせましたが、御理解なかったと見え、御仁慈にあずかり得ませんでした。早急に願わしいのです。何卒」
カーウスは、ルスタムの真正面に立ちはだかり、灰色の冷やかな眼に疑深い色を煌めかせて云った。
「卿の推察は珍しく誤った。ギーウに薬を渡さなかったのは、理解しなかったからではない。最もよく、未来まで洞察したからだ」
「王! 後々の責任と感謝とは、このルスタムが余生の全部を捧げて尽します。お耳に入れたでしょうが、思いがけないことで、儂はいると知らなかった自分の息子は――儂の手で刺してしまった。儂自身のためなら、決して斯様な願いは敢てしませぬ。わが命は王のものです。然し、彼奴は生きのびさせてやりたい。儂の苦しみを、せめて王の秘薬にすがって癒せるなら癒させたい。後程、事情は
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